RFIDについて

http://d.hatena.ne.jp/banraidou/20080227
産業界ではとっくの昔に実用化されて、ありふれた普通の技術になっているRFID。最近RFタグの価格が劇的に低下し、いよいよ民生品に対して使われる状況になってきたらしい。
技術屋にとってはどうしてこういう不思議な怖がり方をするのか、という部分で悲しくなったので書く。日本の理科教育のレベルの低さよ....。文系だから、と書けば許されると思ってるのかね?

RFID - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/RFID
これにもちゃんと出ていますが、RFタグにはアクティブ型とパッシブ型の2種類があります。産業界では信頼性重視のために、アクティブ型のほうが普及していますが、これは電池内蔵ですから高価ですし、メンテナンスの手間もかかります。高価って簡単に言いますが、RFタグ1つが10k円程度するのが普通の世界です。
民生用で書籍などに使われようとしているものは、当然安価なパッシブ型です。安価ってこれも簡単に書きましたが、書籍用のものは現状でも1つ10円程度。今後は1つ1円以下にまでできるだろう、と言われています。アクティブ型の1/10000の価格差です。これは電池を内蔵しないのですから、リーダー側から電力の供給が無い限りは、百万個が一箇所に置かれていたって、一切電波や電磁波を出すことはありません。したがって心臓ペースメーカーなどへのEMC問題もありません。

ところが、リーダー側は事情が異なります。アクティブ型に対しては、お互いに無線通信するだけですから、お互いに送受信できる微弱電波で良いのです。一方パッシブ型の場合、なんとパッシブ型が動作できるだけの電力(電力!)を、電波なり電磁波なりでリーダー側から供給してあげなければいけません。電力を空間を通じて供給することが、どれだけ凄いことか判りますか?
えっと、先にすすむ前に、空間を伝わる電力は、距離の二乗で弱くなります。距離が倍開いたら電力は1/4しか届かない。距離が10倍開いたら電力は1/100になってしまいます。
これは逆に、もし距離1mで電力を伝えて読めるデバイスを、1cm距離で運用するなら電力は1mのときの1万分の1で良いのです。
接触前提のSuicaPASMOなどを1mの距離から読もうと思ったら、リーダー側の電力は1万倍しなきゃならない。これが人体に影響がないわけがありません。
書籍用タグの話に戻りますが、単品管理用にレジで運用する場合、読み取り距離が30cmもあればカゴごと読めて、十分でしょう。10cm程度でも、バーコードと同じ運用で使えると思います。
ところが、出入り口ゲートは読み取り距離30cmでは実用にならないでしょう?最低でも1mは欲しいのでは?必要な電力は二乗倍で増えます。当然EMC問題になります。アンテナ付近は危険になりますよ。

逆にですね、この出入り口ゲートの設置さえ諦めれば、リーダーはレジにごく弱い電波を利用するものと、倉庫に箱ごと読めるちょっと強力なものを書店の従業員が使う、というだけになり、EMC問題はあっさり解決です。

出版ICタグは物流・流通を効率化することがメインです。 - 60坪書店日記
http://d.hatena.ne.jp/kongou_ae/20080105/1199517604

ちゅうことで、こちらで言っている万引き対策が極わずかになるのは、このように本質的に技術的な問題から、と愚考いたします。

続きを書きました。http://d.hatena.ne.jp/sagami3/20080229